イベント(日本語教育)
オンラインセミナー:もう一度「教科書」について考えてみよう! ―『日本語を教えるための教材研究入門』
講師:
深澤のぞみ 先生(金沢大学国際学類教育特別教授)、本田弘之 先生(北陸先端科学技術大学院大学教授)
日時:
2022年5月15日(日) 14:00 - 16:00
場所:
オンライン
【2022/05/25 開催レポート掲載】
こちらのセミナーは終了しました。
お申し込み・ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
「発表資料」「お寄せいただいた質問と、講師からの回答」を掲載しました。
発表資料
下記リンク先から閲覧・ダウンロードしてください。
本田先生発表資料「日本語教科書の「違い」を考える」(.pdf) >
お寄せいただいた質問と、講師からの回答
Q:研究分野として、教材研究にはどのような可能性がありますか?
A:教材研究としては「教科書と現実の日本語使用」、そして「教科書と教師、学習者の関係」という二つの方向の研究が考えられます。前者については、森篤嗣(京都外大)、中俣尚己(京都教育大学)、岩田一成(聖心女子大学)などの諸氏が研究成果を発表していますが、後者については、ほとんど研究がなく『日本語教材研究の視点』(2016、くろしお出版)が唯一の論集ではないかと思います。今後の新たな研究が期待される分野です。
Q:教材を自分で作る場合、どんなことに気をつけるべきでしょうか?
A:まずそのコースの目的を確認した上で、課題を明らかにし、教材の全体像を検討する。そして、一つの課の内容を考えていく、という順番でしょうか。その辺りは、『日本語教授法シリーズ14 教材開発』ひつじ書房 にも詳しく述べられています。試作を繰り返していくと、いい内容になりますし、需要が増えていれば、出版にもつながるかと思います。
Q:新しく出版される日本語教科書について、どのように分析していけばいいでしょうか?
A:教師同士のコミュニティで新しい教科書について話す機会を作っていけるといいと思います。わたし(深澤)は時々、日本語教師や日本語教師を目指す大学院生と「おすすめの日本語教科書 ビブリオバトル」を実施しています。結構、自分の知らない日本語教科書の紹介が聞けて、面白いです。ぜひ楽しい研修の場として、取り入れていただけたらと思います。
Q:オンライン授業における教科書のあり方、選び方などについて、ご意見をお聞かせください。
A:オンライン授業のための(オンライン授業を念頭においてつくられた)教科書はまだないのではないかと思います。つくるとすると、おそらく紙の教科書ではなく、画面共有ができるような電子版の教科書になると思いますが、そのような教科書をどのように作って、どのように売るか(課金方法と採算がとれるかどうか)は、まだ誰もわかりません。今後の課題だと思います。
現在ある「紙の教科書」で「オンライン授業をする」なら、反転授業(学習者が教科書を予習して、授業では練習をする)がいいのではないかと思いますが、そうなると「げんき」のように学習者が理解できる言語で解説が書きこまれた教科書、ということになるでしょうか。
Q:教科書などの翻訳が自由に使える場合、授業のなかで学習者がどのように使用するのがいいでしょうか?
A:日本語教師に限らず語学教師は機械翻訳に冷淡でほとんど興味がない、という人も多いのですが(失業を心配している?)AIによるディープラーニング(ニューラル翻訳)が発展したこの1年~2年の機械翻訳の進歩には目を見張るものがあります。じつは、わたし(本田)は機械翻訳のヘビーユーザーで最近は大学の書類の翻訳などもこれですませています(笑)。
そんなわけで授業でもスマホを自由に使わせていますが、それで授業風景が変わったか、というとそんなことはありません。要するに紙の辞書が電子辞書になり、それがスマホに変わったというだけです。会話練習では、スマホは使えませんし、意外なことに作文の授業でも「スマホを使ったな」と思わせるような作文の提出は(今のところ)ありません。日本語を勉強したい学習者は、自分自身で日本語を理解できるようになりたいのだと思います。
将来、仕事で仕方なく外国語を使わなければならない場合は(わたしのように)機械翻訳が主流になると思いますが、日本人と話をしたい、という人はスマホを補助的にしか使わないのではないでしょうか。
Q:教材の特徴や使い方について、著者あるいはプロの先生たちに教えていただきたいと思います。
A:以前から教科書が刊行されると著者による「使い方セミナー」が開かれてきました。わたし(本田)も出版社の依頼で教材のセミナーを何度もしてきた経験があります。オンラインの時代になって、場所に関係なくそのようなセミナーに参加することが可能になったので、情報を得たら参加することをお勧めします。
また、大学の授業などである程度の人が集められる場合、あるいは、教育機関で新しい教科書の採用を検討している場合などは、出版社に相談すると著者に連絡してセミナーを開催してもらえることもあります(以前は交通費ぐらい準備しなければなりませんでしたが、オンラインなら無料でやってくれることも多いです)。
開催情報
■会場 オンライン(Zoomミーティング)
■日時 2022年5月15日(日)14:00–16:00
■参加費 無料
■定員 90名(先着)
※このセミナーでは、グループワーク(ブレークアウト・セッション)を予定しています。
申し訳ございませんが、閲覧のみのご参加はご遠慮ください。
■講師
深澤のぞみ 先生(金沢大学人間社会学域国際学類教授)
金沢大学大学院社会環境科学研究科博士後期課程修了、博士(学術)。外国人留学生に対する日本語教育と、日本語教師養成に携わる。研究分野は、日本語教育学、応用言語学。主著に、『日本語を教えるための教材研究入門』(共著、くろしお出版、2019)、『日本語を教えるための教授法入門』(共編著、くろしお出版、2021)、『アカデミックプレゼンテーション入門―最初の一歩から始める日本語学習者と日本人学生のための―』(共著、ひつじ書房、2006)、『21世紀のカレッジ・ジャパニーズ―大学生のための日本語で読み解き、伝えるスキル―』(共著、国書刊行会、2018)などがある。
本田弘之 先生(北陸先端科学技術大学院大学教授)
早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程修了、博士(日本語教育学)。早稲田大学卒業後、高校教諭を経て、青年海外協力隊に参加し、日本語教育に携わる。研究分野は、日本語教育学、社会言語学。主著に、『日本語を教えるための教材研究入門』(共著、くろしお出版、2019)、『日本語を教えるための教授法入門』(共編著、くろしお出版、2021)、『街の公共サインを点検する―外国人にはどう見えるか―』(共著、大修館書店、2017)、『日本語教育学の歩き方―初学者のための研究ガイド―[改訂版]』(共著、大阪大学出版会、2019)などがある。
講師から
日本語教師や日本語教師を目指す方にとって、とても身近な存在が日本語教科書のはず……です。
では、今使っている教科書をそのクラス(コース)で使い始めたのはなぜですか? その教科書にはどんな特徴がありますか? ……実は、このような質問にはあまり答えられないことが多いのではないでしょうか。身近すぎてよく見ることの少ない日本語教科書ですが、改めて内容の分析をしてみたら何が見えてくるのか、それを皆様と一緒に考えたいと思います。
■このセミナーの参考書
※本を持っていない方でもご参加可能です。
■申し込み
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